kogamiho.com

本ができるまでの物語
 さいしょに

私はこれまでに、2冊の本を出版しました。
1冊目が 『絵本の読み聞かせQ&A』(2002年、熊本日日新聞)
2冊目が 『おはなし上手』(2003年、幻冬舎)

これら2冊の本は、偶然の出会いやタイミングといった不思議なめぐり合わせ、そして周囲の人たちの理解に支えられて誕生したものです。もしも、ほんの少しでも何かが違っていたら、これら2冊の本が世に出ることはありませんでした。みなさんがこの文章を目にすることも、なかったでしょう。

これら2冊は、どんないきさつから生まれたのか……。
本ができるまでの、不思議な物語をお話し したいと思います


出版前に書きためたノート

出版にそなえ書きとめたノート



 第1部 『絵本の読み聞かせQ&A』誕生秘話

「絶対、役に立つ!」 その思いを伝えたかった

私と絵本の読み聞かせとの出会いは、いまふり返ってみても少し悲しくなる、残念なものでした。
3人の子どもの子育てと家事に追われ、絵本の読み聞かせどころではなかったのです。

「読んで」と長男が持ってこないように、絵本を隠してしまったことさえありました。
このあたりの事情は、『おはなし上手』を読んでいただいた方は、すでにごぞんじのことでしょう。

そういった失敗や試行錯誤を重ねるうちに、子どもが夢中になり、だれにでもできる読み聞かせの方法にたどりつきました。

当時、幼稚園の集まりなどでお母さんたちと話をすると、読み聞かせについての悩みや疑問を耳にすることが、よくありました。

「絵本を読んであげても、ちっとも聞いてくれない」
「勝手にページをどんどんめくってしまう 」
「書いてあることを、一字一句、そのとおりに読まないといけないの?」
「方言で読んでいいのかしら?」(熊本なので熊本弁です)
「『これ読んで』と、同じ本ばかり持ってくる」

……などなど、読み聞かせに関心はあるものの、みなさんうまくいかず、とまどいや疑問をかかえていることがよくわかりました。

読み聞かせというと、一般的には「子どもの教育のために、きちんと上手に本を読んであげる」といったイメージが強いからでしょう。みなさん、「きちんと上手に」できず、悩んでいたのです。

そんなとき、私の「ちゃんと読まない読み聞かせ法」を教えてあげると、「ああっ、そうなんだ! それでいいんだ!」と安心し、納得してもらえることがよくありました。

そういったことが幾度となくあり、
「この方法なら、本当に子どものためになり、忙しいお母さんたちも無理なくできる!」
と、確信するようになりました。

「自分がたどりついた、この読み聞かせ法を、一人でも多くのお母さんたちに伝えたい!」 
そう強く願うようになったのです。

(それは、他のお母さんたちへのアドバイスというだけでなく、かつて読み聞かせさえ満足にしてあげられなかった過去の自分へのはげましの意味もあったのかもしれません……)

どうすれば、私がたどりついたこの読み聞かせ法を、多くの人に教えてあげられるだろうか……。
それを考え、 本の出版を思い立ちました。

そこで、地元新聞社である熊本日日新聞に相談してみることにしました。

熊本日日新聞には情報文化センターというところがあり、そこが個人の出版を受け付けています。一般的な言葉では「自費出版」ということになるのですが、地元の歴史研究家の方が貴重な研究成果を出版していたり、文化的な意義のある本が数多く出版されています。

熊日(くまにち=地元の人は、そう呼びます)から、今度こんな本が出ました、といった新聞記事を日頃から目にしていたので、個人で本を出すなら熊日で、ということに迷いはありませんでした。

出版に向け、原稿の元になるメモをノートに書きとめたり、出版の資料を取り寄せたりして、具体的な準備にとりかかりました。
2001年7月頃のことでした。



出版費用は100万円(以上)! さあ、どうする? 苦悩の日々
さて、出版を思いたったまでは良かったのですが、問題はそこからです。契約するかしないかで、たいへん悩むことになりました。

一番の問題は、出版費用です。
見積もりを依頼し、金額を見てみると100万円以上。

「やっぱり、これくらいはかかるんだ……」

(費用について補足説明しておきます。
読み聞かせの本ということで、カラーのさし絵をふんだんに入れたため、全ページの半分近くがカラー印刷になりました。
熊本県内76
の書店に配本のうえ、どの書店に何冊配本し何冊売れたといった詳細なデータまでいただくことができました。

2冊目の『おはなし上手』の商業出版が決まり全国発売されることになったとき、出版関係者にうかがったところ、そこまでやっていただけてその値段は良心的とのことでした。みなさんも、本を出すなら熊本で出しましょう!?)

さて。

出版費用が、結婚前に自分で貯金しておいたお金なら、そんなに悩むこともなかったと思います。
しかし、そのときすぐに動かすことができたのは、主人が貯めたお金の一部だったのです。わが家のれっきとした財産なのです。

そんな大切なお金を、 子どもたちや主人のためでなく、私が私自身のために使うなんて、そんなことが許されるのだろうか? それを思うと、なかなか自分の中で「GO!」が出ないのです。

作った本が評価してもらえればまだいいけれど、そうでなかったら、なんと謝っていいかさえわかりません。

どうしようかと、かなり悩みました。
主人に相談しようにも、どうやって切り出せばいいのか、それを決めかねて、一人で悩んでいたのです。

ううう〜〜〜ん、 せっかく読み聞かせのいい方法を考えついて、たくさんの人に伝えたいという思いはこんなに強いのに(本が出したい!) 、でもお金のことを考えると(あきらめようかな)…… 。
あーーー、どうしよう!!!!!

なかなか、なかなか決まりません。

そうやって、悩む日々が続きました。

ところが、 ある日のひょんな出来事が、私の背中を「GO!」と押してくれたのです。



背中を押してくれた出来事
2001年10月21日。
私の誕生日がやってきました。

見積書を見ては「うう〜ん……」と、ただでさえ頭をかかえる日々なのに、誕生日か……、またひとつ歳をとってしまうー! と思うと、けっして気分のいい日ではありませんでした。

そんな、重たい気持ちを背負っているところに、実家の母が 「居るねー?」と、いつもの調子でやってきました。
そして、 「今日はあんたの誕生日だろ」 と言って、プレゼントの入った紙袋を渡してくれました。

「ありがとう」と答え、少し気分がよくなるのを感じながら、
「ちょうどいい。出版のことを相談してみようかな」と思いました。

しかし、主人のお金を100万円も使うなんてこと、母が許すわけがありません。嫁に行った娘を持つ親なら、だれだって反対すると思います。

とうとう出版のことは言い出せずに、相変わらずの世間話や子どもの話をしただけで母は帰っていきました。

……そうそう、プレゼント。
私が実家に行けばいつも母が買ってくれる、小さい頃から食べているお饅頭(まんじゅう)があります。

いつものように、そこのお店の甘酒饅頭でも買ってきてくれたのかな? それとも今日はお誕生日バージョンということで、いつもは買えないちょっと高級なお菓子「若鮎」だったりして〜〜。
なんて思いながら、紙袋の中をのぞいてみました。

すると、そこに入っていたもの……。
それこそが、私の背中を押してくれたのです。

「プレゼント、なんも思いつかんだった。こんなもんばってんよかたい。 あんたは昔から書くのが好きだったけん……」 と言いそえて渡してくれたもの。
その紙袋に入っていたのは、ペンとノートだったのです。

それを見た瞬間、「出版しよう」と決心しました。
「小さい頃から、書くことが好きだった……」

「きっと母が応援してくれてるんだ」
そう思えてならなかったのです。

ひょんなきっかけですが、これで自分の気持ちは、はっきりと決まりました。
あとは、お金を出してもらわなければならない主人の理解が得られるかどうかです。

いつもは、なんでも許してくれる、 とても理解のある主人なのですが、今回は100万円という大金です。 OKと言ってくれるか、NOと言われるか、まったく予想がつきません。

ある夜のこと。
騒ぎまわっていた子どもたちを寝かしつけ、やっとおちついて話し合えるタイミングになったとき、見積書を見せながら 「出版してもいい?」と聞きました。
ドキドキしながら。

すると主人は、
「うん、いいよ。 そのかわり、自分の納得のいくものをつくりなさい。がんばりなさい」 と言ってくれました。

ほっ。
よかった。

私はまっすぐに座りなおし、三つ指をついて主人に感謝の言葉を伝えました。
「ありがとうございます」と。

「ただ……」
と主人。

私 「ただ、何?」

主人 「これ払ったら……、次の日からご飯が食べられなくなる……、ってことはないよね?」

私 「ははははー、大丈夫よ」(生活費や貯金の管理は、まかされているので)

こうして、 いざ契約!
契約書を持ってきてください、とさっそく新聞社にメールしました。

その結果、1冊目の本『絵本の読み聞かせQ&A』が出版されることになったのです。

もしも誕生日に母が、いつもどおりお饅頭を買ってきていたら、出版を決意することはなかったでしょう。
また、主人が理解を示してくれなければ、出版は夢だと思ってあきらめていたことでしょう。
そうすれば当然、本は出版されませんでしたし、私がこの体験記を書くこともありませんでした。みなさんがこの文章を目にすることもなかったはずです。

―― 第1部 完 ――


ひとまず「完」としましたが、これですべてが解決したわけではありません。
じつは、本が出たあと一波乱あり、それが2冊目の『おはなし上手』(幻冬舎 刊)の全国発売につながるのですが、この続きはまた後日お伝えしたいと思います。

いずれにせよ、私の2冊の本は、こういったいくつもの不思議なめぐり合わせや、周囲の人たちの理解に支えられて誕生したのです。

HOME

(C)2003-2009 Koga Miho All Rights Reserved.